片山右京の限りなき挑戦 全3回シリーズ 2nd stage 登山家として、“本物”を目指して
Challenge 標高8156mのマナスルに世界初の11月登頂成功!
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前回、自転車について話したときに言いましたが、一番好きなのは山なんです。僕は登山家でありたいと思っています。
標高8163m、世界第8位の高さを誇るネパールのマナスルに、2004年には頂上まであと500mというところで強風のため断念せざるを得なかったんですが、昨年の11月に再挑戦して、登頂に成功することができました。今回登頂できたのはたった2隊だけで、しかも11月に成功したのは世界初です。
ちょうど日本GPが終わって、そのまま帰りに富士山に登って1泊し、夕方には東京で会議があったのでそれこそ走って下りて、もう次の日には出発。その4日後には、もうマナスルの6400mにいましたね。そこまでは順調だったんです。
ところが悪天候でそれからが厳しく、中止の声が大きい中、シェルパが凍傷になったりで1人減り2人減り、途中からシェルパ2人だけで進んだんです。でも強い吹雪でもう全く先が見えない。それでも突っ込んで何とかキャンプ2まで来たものの、次の日は天気が悪くて立ち往生、3日目の朝が晴れてキャンプ3に向かったら、また天気が崩れ、それがもっとひどくて、本当に雪崩がいつ来るかわからないようなところを登りながら、手の感覚はなくなってくる…。
こうして進んでは悪天候に阻まれ、というのを続けているうちに、足がおかしいと感じ始め、靴を脱いでマッサージしたものの全然血が来ていないのがわかりました、凍傷になり始めていたんです。
登頂するためには、過酷な環境に耐え続けなければならない
登頂するためには、過酷な環境に耐え続けなければならない
雪崩だらけの大変な中を進んだら、突然、向こうが切れて何もなくなり、それが頂上のすぐ下でした。危険な痩せ尾根をロープを伝って這い上がり、本当に片足しか置けないような、ここから先は4000mもの崖、そんな頂上にようやく立つことができました。今までの吹雪が嘘のように、無風快晴でした。
そこからキャンプ2まで一気に17?18時間掛けて下りたんですが、それからがまた悪天候で難航し、雪が柔らかいので荷物を捨てて軽くし、行きに掛けたロープも消え、とても危険な状況ながら、不思議と死にはしないと思っていました。でも、凍傷のせいで指はなくなるだろうと。幸い後方支援の人たちに助けられ、下山することはできましたが、足は完全に凍傷。ヘリでカトマンズの病院に入院し、さらに成田からも病院に直行でした。
頂上からの眺望
頂上からの眺望
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