片山右京の限りなき挑戦 全3回シリーズ
3rd stage(最終回) 新たな挑戦、点が線になって
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【F1】人間の進化をかい間見る
今年はドライバーとしてではなく、モータージャーナリストという立場でF1に関わることになりましたが、ハードもソフトも人間も含め、すべてが変わっていましたね。時計の歴史で言えばロマンティシズムにあふれるクラシカルなクロノグラフから、僕らの時代が電池を使ったクォーツ時計で、今の時代はもう電波時計も越えて次のナニカがやってきているという感じでしたね。このダイナミックな変化は、やはり「ドライバー=人」を通じて感じることが多かったです。
今のハミルトンに代表される第四世代は、英才教育で育てられた世代とも違って、確実に“進化”している人間と言えますね。大袈裟に言えば「宇宙人」みたいなものです(笑)。彼らは教育というよりは、環境や習慣などによって自然と磨かれてきた原石ですから、輝きが違います。実際にクルマの挙動を感じるオシリと全身に判断を下す脳が完全に直結しているような、人間の能力を遥かに超えた“速さ”を見せてくれますからね。もちろんまだ荒削りな部分もあるのですが、こういう世代の進化を通じて、F1自体に大きなウネリというか未知数の変化を感じました。

実際、来年からはレギュレーションも変化して、トラクション・コントロール(※)などが禁止されます。これによって、より一層マシンを操る人間の感性とかセンスとかが際立ってきますので、まったく予測のつかない状況がやってくるはずです。技術の進化はもちろん、人間の進化、そして大きな過渡期をむかえたF1……来年は予測がつかないことこそ、見どころと言えるかもしれません。
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1997年当時の写真。ミナルディーチームのドライバーとして活躍
(※)トラクション・コントロール…マシンのスピン防止、スロットルに対するドライバーの過度な要求を補正することを目的とした安全システム
【パリダカ】より過酷な環境下での完走を目指す
2007年のパリダカで、BDF(バイオディーゼル燃料)100%の燃料で出場して、おかげさまで完走という結果を残すことができました。そしていよいよ2008年です。レース車両はすでに船に積まれていてパリを目指しています。もちろん今回も自分たちのミッションとしては環境をテーマにまず「完走」することです。そしてこれらの挑戦を通じてBDFを洗練させ、燃料として世の中でまったく問題なく利用できる状態を実現していくことです。
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だけど今回は前回とちょっと違う状況だと言うこともできまして…。
実は前回は完走率が50%近くあり、ここ数年では一番高い完走率で、簡単なコースだったと言うこともできます。一方、今年はSS(スペシャルステージ)の距離も延びて、前回、コースに対する砂漠の比率が25%だったのに対して、今年は50%と半分近くが砂漠となるような過酷なコース設定になっています。そんな事情もあり、我々も前回の完走はあくまで運が良かったんだと思うことにして、前回の結果に甘えることなく、新しい気持ちで2008・パリダカにのぞんでいます。

また、環境がテーマとはいえ参加することだけで意味があるとは思っていません。走りに関しても「環境」をエクスキューズにするようなことはしたくないので、今回はクルマにある程度のポテンシャルを持たせています。プライベーターとしては世界で初めてコモンレール式ディーゼルエンジンで出走しますし、これも新しい挑戦と言えます。かなり過酷なレース展開が予測されますが、ぜひ期待していてください。
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